2007年03月08日
職場はなぜ壊れるのか/荒井千暁
職場はなぜ壊れるのか - 産業医が見た人間関係の病理 (ちくま新書)
ポストバブルの時代、多くの企業が熱狂的に導入した成果主義人事制度。
しかし、昨今の論調は、導入当初に目論んだような効果で出ているかといえば大いに疑問、むしろ弊害の方が目立つ、というものが多いように思う。確かにそうかもしれない。
本書は、産業医の立場から「心の病」の問題や過労自殺の問題などについて、「成果主義の弊害」を検証しながら具体的に描かれたものである。
その主張はしっかりしており、なるほど慧眼だなと思わせる記述が多い。これで税込み735円は、安い。
さて、きりうの職場でも、成果主義的な人事制度が導入されている。
いや、「されている」って、まるで他人事みたいだな。誰かからツッコミ入りそう。
ここで、数年前に、人事制度の設計と運用指導の担当者として、導入「する」側にいたことを、カミングアウトしなくてはいけない。
そうじゃないと、この先の感想が書けぬ。(^^;
で、今日はちょっと真面目に語ってみることにする。
導入側としては、当初から「成果主義は運用を誤ると大変な副作用を伴う劇薬みたいなもの」という意識はあったのである。
ただ、それは「不平・不満が渦巻く職場」という、結果として正しかったけれども、同時に一面的でしかなかった見方であったようにも思う。
その意味で、本書に出てくるいくつかの「素描」は、当時の想定を越える事象を示していたり、あるいは裏付けたりして大変に興味深い。
また、「派遣という労働体系」が心の問題という観点からは相当ポジティブに捉えられているのは小さな驚き。
正社員と同じ(あるいはそれ以上の)仕事をしているのに、給与が低い、おかしい、という否定的な記事ばかりを、今の仕事柄、見すぎているからだろうか。
きりうが勤める会社の成果主義的人事制度は、きりうの後任者たちによって、今も進化を続けている。
その原動力には、「少しでも良いものに」という思いが(いろんな柵とともにではあるにせよ)あるはずだ。
もちろん、「職場のメンタルヘルス」という昨今を代表するキーワードも、十二分に考慮されていることだろう。
それでも、思うのだ。
正常なバランス感覚がなければ、どんな制度をつくっても問題はなくならない。
制度はツールに過ぎない。
運用者が自分の都合の良いように使えば、問題は起きる。
よく切れる包丁は、絶品料理をつくるのにも、ヒトを殺傷するのにも、使える。
誤用や悪用のリスクを小さくすることはできても、根絶は無理だ。
企業活動である以上、費用対効果という視点もある。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
さて、きりうは、正常なバランス感覚を持っているか。
「何様のつもり」の評価を、普段の言動を含めて部下に与えていはしないか。
今いる職場で、果たして「何ほどのこと」ができるのか。
しばし、沈思黙考せざるを得ない。
職場はなぜ壊れるのか - 産業医が見た人間関係の病理
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480063465/
ポストバブルの時代、多くの企業が熱狂的に導入した成果主義人事制度。
しかし、昨今の論調は、導入当初に目論んだような効果で出ているかといえば大いに疑問、むしろ弊害の方が目立つ、というものが多いように思う。確かにそうかもしれない。
本書は、産業医の立場から「心の病」の問題や過労自殺の問題などについて、「成果主義の弊害」を検証しながら具体的に描かれたものである。
その主張はしっかりしており、なるほど慧眼だなと思わせる記述が多い。これで税込み735円は、安い。
さて、きりうの職場でも、成果主義的な人事制度が導入されている。
いや、「されている」って、まるで他人事みたいだな。誰かからツッコミ入りそう。
ここで、数年前に、人事制度の設計と運用指導の担当者として、導入「する」側にいたことを、カミングアウトしなくてはいけない。
そうじゃないと、この先の感想が書けぬ。(^^;
で、今日はちょっと真面目に語ってみることにする。
導入側としては、当初から「成果主義は運用を誤ると大変な副作用を伴う劇薬みたいなもの」という意識はあったのである。
ただ、それは「不平・不満が渦巻く職場」という、結果として正しかったけれども、同時に一面的でしかなかった見方であったようにも思う。
その意味で、本書に出てくるいくつかの「素描」は、当時の想定を越える事象を示していたり、あるいは裏付けたりして大変に興味深い。
また、「派遣という労働体系」が心の問題という観点からは相当ポジティブに捉えられているのは小さな驚き。
正社員と同じ(あるいはそれ以上の)仕事をしているのに、給与が低い、おかしい、という否定的な記事ばかりを、今の仕事柄、見すぎているからだろうか。
きりうが勤める会社の成果主義的人事制度は、きりうの後任者たちによって、今も進化を続けている。
その原動力には、「少しでも良いものに」という思いが(いろんな柵とともにではあるにせよ)あるはずだ。
もちろん、「職場のメンタルヘルス」という昨今を代表するキーワードも、十二分に考慮されていることだろう。
それでも、思うのだ。
正常なバランス感覚がなければ、どんな制度をつくっても問題はなくならない。
制度はツールに過ぎない。
運用者が自分の都合の良いように使えば、問題は起きる。
よく切れる包丁は、絶品料理をつくるのにも、ヒトを殺傷するのにも、使える。
誤用や悪用のリスクを小さくすることはできても、根絶は無理だ。
企業活動である以上、費用対効果という視点もある。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
さて、きりうは、正常なバランス感覚を持っているか。
「何様のつもり」の評価を、普段の言動を含めて部下に与えていはしないか。
今いる職場で、果たして「何ほどのこと」ができるのか。
しばし、沈思黙考せざるを得ない。
職場はなぜ壊れるのか - 産業医が見た人間関係の病理
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480063465/