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きりう
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バリア・セグメント 水の通う回路 完全版 / 松岡圭祐

時々、ヒーローやヒロインが大活躍して平和を守る、というような話を無性に読みたくなるときがある。
そんなとき、松岡圭祐の「千里眼」シリーズが、この子供じみたニーズを満たしてくれる。

本書も、そういう類の話だろうと勝手な憶測をして購入した。
ところが、「前書きにかえて」という序文に、次のようなフレーズがあり、いつもの千里眼シリーズに期待するようなわくわく感とはまた違った種類の興味を抱くことになった。

<以下引用>
じつは本作は執筆当初、ハードカバーで刊行されたものとは異なる"事件の真相"が描かれていた。けれども当時の編集者はいった。「これはミステリー小説の約束事に反している。真相は誰でも知っている身近なもので、しかも"真犯人"は、主人公のかねてからの知り合いの"意外な人物"でなければ」と。
 〔中略〕
そういうわけで、本書こそが1998年当時に出したかった『水の通う回路』の、いまあるべき姿である。
<引用終わり>

なるほど、ハードカバーでの刊行時のみならず、最初の文庫化(『バグ』と改題)でも不完全なままだったものを、ようやく著者の思い通りに仕上げたというのであれば、きりうの好きな"松岡ワールド"が全開になっているのかもしれない。
また、"ミステリー小説の約束事に反した"というストーリーが、どれほどのものか(あるいは本当に今一つのものなのか)を検証するという楽しみ方もできそうだ。

幸か不幸か、きりうはハードカバー版「水の通う回路」も、文庫版「バグ」も読んでいない。

で、祝日にもかかわらず、出勤した本日の帰りの電車の中で読了。

感想は・・・うーん、微妙だなあ。

主人公がヒーローとしてバリバリ活躍する姿はまずまず期待通りだったが。

肝心の、著者が描きたかったというエンディングが、これなのか?!と。
確かにリアリティはあるかもしれないけどね・・・。けどね、けどね、けどね・・・

これは、いっちょハードカバー版も読んでみなければ、と変な気が起きてしまう次第。

そっちの方が面白いンじゃないのか?!
こんな感想を抱かせるなんて、本当に商売上手な作家さんである。

バリア・セグメント 水の通う回路 完全版 / 松岡圭祐 (小学館文庫)
http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/solrenew_detail?isbn=4094081046

#ちなみに、ファンの方には有名らしいが、松岡圭祐氏の小説はハードカバーと文庫でストーリが違うことの方がむしろ普通だそうな。
#一つの小説が2度楽しめるともいえるが、いちいち買ってたらキリがないね。

| 投稿者 きりう 21:35 | コメント(0) | トラックバック(0)